2022-06-03から1日間の記事一覧

樋口一葉「経づくえ 二」

四 園様はどうされました、今日はまだお顔が見えませんがと聞かれて、こんなことが あって次の間で泣いておりますとも言えないので、少しばかりお加減が悪かったのです が今はもうよろしいのです、まあお茶をどうぞと民はその場を取り繕った。学士は眉を ひ…

樋口一葉「経づくえ 一」

一 一本の花をもらったがために千年の契り、万年の情を尽くして誰に操を立てての一人 住まい、せっかくの美貌を月や花からそむけて今はいつかも知らぬ顔、繰る数珠に引か れて御仏の世界にさまよっている。あれはいつの七夕の夜だった、何に誓って比翼の鳥 …