2022-05-16から1日間の記事一覧

昔の寄席 馬場孤蝶

関東以南に住んでいた父が何度も買っては枯らしていたシャクナゲを思い出す。着る ものでもなんでも赤を買う男だった。ここでは何もしなくても毎年咲く。がさすがに 今年の大雪で、一番好きな白いシャクナゲが消えてしまった。何もしなさすぎの罰。 五 竹町…

樋口一葉「暁月夜 二」

この思いが通じさえすれば心休まるだろうと願うのは間違いだ。入り込むほどに欲が 増えて、果てのないのが恋である。敏は初めての恋文に心を痛めて、万が一知られたら 罪は自分だけではない、知らなかったとはいえ姫も許されまい、さらにあの継母がどれ だけ…

樋口一葉「暁月夜 一」

桜の花が梅の香を漂わせて柳の枝に咲くような姿だと、聞くだけでも心惹かれるよう な人が一人で住んでいるという噂、雅な男がその名に心を動かして、山の井の水に憧れ るような恋もある。香山家と聞こえるは、表札の従三位を読むまでもなく、同族中でも その…