2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

馬場孤蝶「明治の東京」

筍ご飯炊いて誰もいない、補助金もらって植樹されたまま放置されている公園へ行っ 独占お花見。大島桜が一番好きだが、これは小さくて葉も青くないのでどうだろう。 先日古本屋さんに樋口一葉の評論を注文したら、一葉記念館のチラシを同封して くれて嬉しか…

馬場孤蝶「明治の東京」

時代に取り残された乗り物 川蒸気とガタ馬車 明治の始め頃と云ったところで、僕は十二三年頃から此の方のことしか知らぬので あるが、僕のそういう記憶の中にある事柄から云っても、交通の機関は、少し遠路に 渉るものであるとすると、汽船と馬車(乗合)で…

馬場孤蝶「明治の東京」

六 今仮に、飛鳥山から千駄谷あたりまでへ直線を描いて見ると、環状道路はこれに対し て、大凡(おおよそ)放物線の形をなしているともいえるだろう。 さて、路線はここで飛鳥山の北横を小回りして、低い傾斜を下り、東北線の鉄路を 越える。ここの川は名主…

馬場孤蝶「明治の東京」

三 路は宮益の坂下から左へ折れて迂曲しつつ新宿へと向いている。 もうどうしても三十年の前であるが、新宿駅から渋谷へ出る路が、一半(半分)は 生垣の傍に亭々たる(高くそびえ立つ)大木の欅並木のように並んだ東京郊外特有の 農家めいた屋敷の連続、一…

一葉のことども

…というものを暇にあかせて見つけたので書き写します。 文芸春秋の新年号に「明治文壇憶え書」というのが出ている。物故した明治時代の 文学者に関する逸事のようなものを書いたものであるが、どうも、余りよく詮議をした ものではないようだ。失礼な推測な…

馬場孤蝶「明治の東京」

かなり華々しいお花見。 四 私は勿論江戸っ子ではない。生れは地方であって、東京へ出て来たのは十歳の時で ある。だから江戸とか東京とかの旧い事などは直接余り知らない。けれども伝聞した事 は可成あるので、時たまには、そんな事を書きもする。それが為…

馬場孤蝶「明治の東京」

我が家にやっと春が来た。 三 龍岡町の南端、牛肉屋豊国の前に当る、大学の長屋の角の大きい欅の柱に刀でさんざ んに切り込んだあとが遺っていた。俗には、それを化物柱だといい、それが夜なかには 化物に見えるので、通りがかりの侍が引き抜いて切りつける…

馬場孤蝶「明治の東京」

東京の思い出コレクション。ほかに長谷川時雨と鏑木清方と田山花袋のものを持って いて、郷愁(って東京に住んだこともないが)を持って愛読している。 復刻版なので、新字体に置き換えて読み進めていこうと思う。 古き東京を思い出して 一 もうそろそろ『東…

海へ

穏やかな春の瀬戸内海。どこでもいいが、海から離れて暮らすのは今年で終わりに したい。 四国に帰った際、セミリタイヤ先輩の住む杵築市に行ってみたいと思っていたが、 冷気が玄海灘から流れてくる場所と知り、恐れをなして臼杵市に変更した。いつも車で …

うとましきはたゝかひ也

安達太良山の空と梅、今満開 いにしえの人を手本にしないというわけではないが、故きを温ねて新しきを知ると いうのはどういうことか。私が少し思いついたことを言葉なり歌にして、それが広まる と人は変だ、おかしい、そのようなことを言うのかなどとそしる…

しのぶぐさ

28年1月 浪六氏から今日こそ手紙が来るかと待ちながら、はかなく日が暮れた。大晦日なので あちらもせわしくしているのだろう。 まちわたる 人のたよりは聞かぬまに またぬとしこそまづ来たりけれ 待ちわびた人からの便りは来ずに、待っていない新年が先…